Running on the Winding Road

沖縄でIT系企業に勤めてます。沖縄、ビジネス、世の中の動き、読書、音楽のことなどいろいろ。

「普天間」交渉秘録 / 守屋武昌

守屋 武昌
新潮社
発売日:2010-07-09

政府、事務方側、防衛庁トップで交渉当事者だった著者による普天間基地関連問題におけるアメリカ、沖縄との交渉記録。
SACO合意以降からの混乱を時系列で押さえることができる一次資料として良書。


但し、県外移設に係る話は一切出てこない。俺は県外移設派なのでやはり県内移設は受け入れられないんだけど、とりあえず県内を念頭に置いての感想を書いておきたい。


足を引っ張っているのはむしろ沖縄側だった。
稲嶺前知事の下記発言が事実なら沖縄県民としては非常に許しがたいと思う。

「守屋さん、沖縄では大きな仕事は二十年かかるんですよ。石垣空港の時だって、年月がかかっても誰も困らなかった。今回はまだ七年です。たいしたことないじゃないですか」

苦渋の決断とか言ってたけど全く違うと思わされた。そもそもの目的は普天間基地の危険の"早期"除去だったはず。
政府側が環境に配慮した案にも関わらずわざわざ沖合いに出して埋め立て量を増やすような案にしようとごねたり、合意した案を引っくり返したりで結局14年たった今もそのまま。ゼネコン利権、補助金利権を引き出すためならあの手この手で引き伸ばす。
シュワブ陸上案が一番良かったのでは。
前知事、北部ゼネコン会長、前名護市長、名護市役人、沖縄県の自民党政治家がそれぞれ実名で出てくるが、もうこの人達支持は出来ない。って元々支持してないんだけど。


沖縄政財界の利権構造は根深いね。沖縄に関しては自民党議員はやっぱり復帰させないほうがいいな。
沖縄には利権にも絡んでなく、かつ基地反対と叫ぶだけではない第3軸の政党、政治家が必要。むしろ出てきてもらわないと投票先が無くて困る。


あと本書末に守屋さんの防衛についての考えに海兵隊の県外移転が不可能な理由について記載されていたがやはり納得できない。
なごなぐさんのツイートにこんなのがあったけど説得力あるね。
http://twitter.com/nagonagu/status/13403354684194816http://twitter.com/nagonagu/status/13404011478654976


その他、防衛庁の省昇格の話、記者との情報交換、政治家、各省庁、役人各人の思惑などで詳細に説明されており色々面白かった。
守屋さんはおそらく有罪確定になる(色々裏はありそう)だろうけどこの本を世に送ってくれたのはありがたい。

沖縄県民は読んでおいて損はないと思う。

沖縄側当事者の反論も期待したい。出てこないと思うけど。